宮古島 採用ノウハウ 石垣島

【2026年】最低賃金1,086円で「年収の壁」はこう変わる|パートの働き控え対策

【2026年】最低賃金1,086円で「年収の壁」はこう変わる

2026年12月2日から、沖縄県の最低賃金は1,086円になります。時給が上がることは働く側にとって良いことのはずですが、宮古島・石垣島の現場では毎年こんな声が上がります。

「時給が上がったので、扶養の範囲に収まるようにシフトを減らしたい」

これは働き控えと呼ばれる現象です。時給が上がると、同じ年収に達するまでの労働時間が短くなるため、扶養内で働きたいスタッフは勤務時間を減らさざるを得なくなります。結果として、事業者側は「賃上げしたのに労働力が減る」という状況に直面します。

本記事では、この構造を具体的な数字で整理し、事業者が取れる対策をまとめます。

2026年の「年収の壁」はどこにあるか

2025年の税制改正により、年収の壁は大きく再編されました。2026年時点の主なラインは以下のとおりです。

ライン何の壁か超えるとどうなるか
110万円住民税本人に住民税が発生する
130万円社会保険の扶養扶養から外れ、自分で社会保険料を負担(負担増が最も大きい壁)
160万円所得税本人に所得税が発生する(従来の103万円から引き上げ)

106万円の壁について
従来、社会保険の加入判定には「月額88,000円以上(年収約106万円)」という賃金要件がありましたが、この要件は2026年10月までに撤廃される予定です。撤廃後は週の所定労働時間が20時間以上かどうかが主な判定基準になります。つまり、年収がいくらかではなく「週何時間働いているか」で社会保険加入が決まる形に変わります。制度移行の時期や詳細は変更の可能性があるため、最新情報を確認してください。

実務上、最も影響が大きいのは130万円の壁です。ここを超えると社会保険料の自己負担が発生し、手取りが一時的に減る「逆転現象」が起きるため、多くのパートスタッフがこのラインを強く意識します。

時給1,086円で「壁」に到達する労働時間

ここからが本題です。時給1,086円で各ラインに到達するまでの労働時間を計算します。

年収ライン年間労働時間週あたり月あたり
110万円(住民税)約1,013時間約19.5時間約84時間
130万円(社保扶養)約1,197時間約23.0時間約100時間
160万円(所得税)約1,473時間約28.3時間約123時間

前年(1,023円)との比較:年間74時間の減少

130万円の壁に到達するまでの労働時間を、改定前後で比較します。

時給130万円に達する年間労働時間週あたり
1,023円(改定前)約1,271時間約24.4時間
1,086円(改定後)約1,197時間約23.0時間
差約74時間の減少約1.4時間の減少

扶養内で働くスタッフ1人あたり、年間で約74時間分の労働力が失われる計算になります。これは1日8時間換算で約9日分です。

スタッフ10名なら年間740時間が消える

扶養内勤務のパートスタッフが10名いる事業所では、単純計算で年間740時間の労働力が減少します。これは、週30時間勤務のスタッフ約0.5人分に相当します。

つまり、賃上げによって人件費が増えたうえに、稼働できる総時間まで減るという二重の負担が生じます。宮古島・石垣島の飲食・宿泊・小売のように扶養内パートの比率が高い業種では、この影響が特に大きくなります。

見落としがちな「週20時間」の意味

時給1,086円で週20時間働くと、年収は約112.9万円になります。

1,086円 × 20時間 × 52週 = 1,129,440円

ここで注意すべき点が2つあります。

  • 住民税の110万円ラインを超える:週20時間でも住民税が発生する水準に達します
  • 社会保険の加入基準に該当する:週20時間以上は社会保険の加入対象となるため、事業所側にも保険料負担が発生します

「週20時間」はかつて扶養内勤務の目安として使われてきましたが、時給1,086円の時代にはすでに複数の壁に接触するラインになっています。従来の感覚でシフトを組んでいると、意図せず加入対象者を増やすことになりかねません。

12月2日発効というタイミングの意味

沖縄県の発効日は12月2日です。年収は暦年(1月から12月)で計算されるため、このタイミングには実務上の意味があります。

1
2026年の年収への影響は限定的
12月2日から年末までは約4週間しかないため、2026年の年収に与える影響はわずかです。今年の扶養調整については大きな変更は不要なケースが多くなります。
2
影響が本格化するのは2027年1月から
翌年1月からは通年で1,086円が適用されるため、前述の「年間74時間減」がフルに効いてきます。年明けのシフトが組めなくなるという事態を避けるには、12月中の面談が重要です。
3
年末年始の繁忙期と重なる
多くのスタッフが「今年の年収枠を使い切った」状態になるのが11月から12月です。ここで働き控えが発生すると、年末の稼ぎ時に人が足りなくなります。年収の見込みを早めに把握しておくことがリスク管理になります。

事業者が取るべき4つの対策

対策1:11月中に全パートスタッフと年収見込みの面談を行う

最も基本的かつ効果的な対策です。スタッフ本人も自分の年収見込みを正確に把握していないことが多く、「気づいたら壁を超えそうだから今月は入れません」という直前の申し出につながります。

年間の見込み額を一緒に計算し、翌年のシフト計画まで踏み込んで話すことで、突発的な離脱を防げます。面談の進め方は1on1面談で定着率を高めるガイドも参考にしてください。

対策2:扶養を外れる選択肢を「損得」で提示できるようにする

130万円を少し超える働き方は、社会保険料の負担により手取りが減ることがあります。しかし年収がある程度以上になれば、手取りは扶養内より増えます。

重要なのは、事業者側が「中途半端に超えるのが一番損」という構造を説明できることです。「扶養を外れて働きませんか」と誘うのではなく、「この時間数だとこうなる」という選択肢を数字で示すことで、スタッフ側も納得して判断できます。

社会保険の仕組みについては雇用保険・社会保険の基礎と採用への活用法で整理しています。

対策3:減った時間を埋める採用を先に動かす

スタッフ10名で年間740時間が減るなら、その穴を埋める採用が必要になります。しかし年明けは求職者の動きも活発になるため、12月時点で求人を出しておくのが理想です。

採用したい月の1.5か月から2か月前には掲載を開始する必要があります。短時間勤務者を複数名確保する形であれば、シニア層や学生など、これまでとは違う層へのアプローチが有効です。シニア採用の実践方法やパート・アルバイトの定着施策もあわせてご覧ください。

対策4:シフトの組み方を「人数」から「時間」に切り替える

1人あたりの上限時間が下がる以上、同じ人数で同じ時間をカバーすることはできません。必要な総労働時間を先に算出し、そこから逆算して人数を決める発想に切り替える必要があります。

繁忙期・閑散期の波が大きい宮古島・石垣島では、この設計が特に重要です。年間の必要時間を可視化しておくと、いつ・何人採用すべきかが明確になります。

よくある質問

Q. 交通費は年収の壁に含まれますか?

税制上の年収(所得税・住民税)には、非課税限度額内の通勤手当は含まれません。一方、社会保険の扶養判定(130万円)では通勤手当も収入に含まれます。この違いを知らずに計算していると、税金は大丈夫でも社会保険の扶養から外れるという事態が起きます。スタッフへの説明時には特に注意が必要な点です。

Q. 賞与を出すと壁に影響しますか?

影響します。賞与も年収に含まれるため、年末に賞与を支給すると意図せず壁を超えてしまうケースがあります。扶養内勤務のスタッフに賞与を検討する場合は、事前に本人の年収見込みを確認してください。賞与の設計については給与・賞与設計の見直し方で解説しています。

Q. 働き控えを防ぐために時給を上げないという選択はありますか?

最低賃金を下回ることはできないため、1,086円未満にすることは不可能です。また、時給を据え置いても周辺事業者が引き上げれば相対的な競争力が下がります。働き控えは「時給を上げない」ことでは解決せず、シフト設計と採用計画で吸収するしかない、というのが実務的な結論です。

Q. 外国人スタッフも年収の壁の対象ですか?

税・社会保険の仕組みは国籍を問わず適用されますが、特定技能などフルタイム就労が前提の在留資格では、そもそも扶養内勤務という働き方をしません。したがって働き控えの影響は受けにくく、安定した労働時間を確保できる点は外国人材活用のメリットのひとつです。詳細は特定技能の給与・待遇設計7つのポイントをご覧ください。

まとめ

  • 時給1,086円では、130万円の壁に到達するのは週約23時間・年間約1,197時間
  • 改定前と比べ、扶養内スタッフ1人あたり年間約74時間の労働力が減少する
  • 10名規模なら年間740時間が失われる計算になる
  • 影響が本格化するのは2027年1月。12月中の面談とシフト再設計が鍵
  • 賃上げ分の人件費増と、稼働時間減の二重負担を前提に採用計画を立てる必要がある

シフト設計・扶養調整・採用計画の立て方について個別にご相談いただけます

無料相談はこちら(LINE)

※本記事は2026年9月時点の制度情報に基づく一般的な解説です。個別の税務・社会保険の取り扱いは、税理士・社会保険労務士にご確認ください。