「採用1年後、正直どうですか?」
石垣島の特別養護老人ホームの施設長に、単刀直入に聞きました。返ってきた答えはこうでした。
「あの決断がなければ、うちは今頃どうなっていたかわからないです。入居者さんへのケアの質を保てなくなっていたかもしれない」
この施設では、2023年に特定技能でミャンマー人スタッフ3名を受け入れました。採用から1年後の「現実」を包み隠さず語っていただいた内容をご紹介します。
目次
1. 特定技能フィリピン人を選んだ理由
施設長が特定技能の活用を決めたのは、日本人スタッフの採用が完全に行き詰まったからです。2年間で6名採用したものの、1年以内に5名が離職。石垣島のハローワークには介護職の求職者がほとんどいない状況でした。
ミャンマー人を選んだ理由は2つです。1つ目は「介護・看護の職業意識が高い」こと。ミャンマーは海外で介護職として働く人材が多く、介護に対する誇りと職業意識を持っている方が多いと聞いていました。2つ目は「明るい性格がケア現場に合う」という先行事例を聞いていたことです。
2. 採用にかかった費用と期間
・送り出し機関費用:約90万円(1名約30万円)
・登録支援機関費用:月6万円(3名×2万円)
・渡航費・初期生活費:約45万円(1名約15万円)
・在留資格申請・行政書士費用:約36万円
・合計(着任まで):約177万円
・着任までの期間:約4.5ヶ月
「高いと感じましたが、日本人スタッフを1人採用してすぐ辞めるサイクルを繰り返すより、確実に安かった。しかも3名が揃って来てくれたことで、施設全体の安定感が一気に変わりました」と施設長は語ります。
3. 着任後の現場の様子
3-1. 最初の3ヶ月
着任初日は石垣島を一緒にドライブして島を案内しました。仕事の説明は翌日から。最初の3ヶ月は登録支援機関のサポートを受けながら、日本語での業務指示に慣れる期間としました。
特に苦労したのは「介護記録の日本語文章作成」でした。身体介護は問題なくこなせましたが、記録の文章を書くことに時間がかかりました。そのため、最初の3ヶ月は記録の文章テンプレートを作成し、埋めていく形式に変更しました。
3-2. 入居者・家族の反応
「最初は入居者のご家族から『外国人スタッフで大丈夫ですか?』という問い合わせが1件ありました。しかし3ヶ月後には、そのご家族から『あの子が担当になると入居者が笑顔になる』と言っていただけました」
フィリピン人スタッフの「笑顔とコミュニケーションの丁寧さ」が、認知症の入居者にも伝わっていました。言語より先に感情が伝わる介護現場での強みです。
3-3. 日本人スタッフへの影響
「予想外だったのは、日本人スタッフのモチベーションが上がったことです。外国人スタッフが頑張っている姿を見て、『自分たちも負けていられない』という雰囲気が生まれました」と施設長は話します。離職率が高かった日本人スタッフの定着率も改善しました。
4. 失敗から学んだ注意点
- 住居の台風対策を事前説明する:初めて台風を経験した際に、スタッフが非常に怖がりパニックになりました。事前に台風の仕組みと行動マニュアルをミャンマー語で作っておくべきでした
- 食事制限への配慮:ミャンマー人スタッフの多くは仏教ですが、特に食事制限はありません。ただし、個人の好みや宗教的習慣(断食期間など)への配慮が必要なケースもあります
- 送金サポートの仕組みを作る:ミャンマーの家族への送金方法がわからず困っていました。国際送金サービスの案内を入職時にセットで行うべきでした
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まとめ:施設長からこれから検討する方へのメッセージ
「迷っている時間がもったいない、というのが正直な感想です。準備と覚悟さえあれば、ミャンマー人スタッフは必ず力になってくれます。最初の3ヶ月さえ丁寧にサポートすれば、後は本当に頼もしい仲間になります」
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入社後12ヶ月の成長ストーリー
石垣島の介護施設がミャンマー人スタッフを採用してから1年。実際にどんな成長があったのか、月ごとの変化を振り返ります。
入社1〜3ヶ月:慣れるだけで精一杯
入社直後は日本語での業務指示を理解することだけで手一杯でした。利用者の名前を覚え、施設内の場所を把握するだけで毎日が終わる状態。それでも「絶対に覚えてみせる」という意欲は日本人スタッフ以上で、メモを常に携帯してすべての業務を記録していました。
入社4〜6ヶ月:自信がついてきた
利用者の個性や好みを把握し始め、日本語での声かけも増えてきました。「〇〇さんは朝食後に散歩したがっている」といった情報を自発的に申し送りに加えるようになり、他のスタッフからの評価が上がり始めました。
入社7〜9ヶ月:現場のキーパーソンに
夜勤に入れるようになり、緊急時の報告も一人でできるようになりました。ミャンマー語と日本語を使った自作の業務チェックリストを作成し、後から入ってきた別の外国人スタッフの教育役を買って出るまでに成長しました。
入社10〜12ヶ月:施設の文化を変えた
ミャンマーの仏教行事に合わせて有給を取得した際、施設長が「多文化を学ぶ機会にしよう」と全スタッフに共有したことで、施設内の多様性への理解が深まりました。「彼女が来てから職場の雰囲気が明るくなった」と利用者からも声が上がるようになりました。
採用を通じて施設が得た文化的な学び
ミャンマー人スタッフを受け入れたことで、施設側が学んだことも少なくありません。僕がヒアリングした中で印象的だった学びを紹介します。
- 「家族を大切にする文化」への理解:ミャンマーでは親の看病や冠婚葬祭を優先することが当然とされます。突然の欠勤に苛立つのではなく、事前に代替シフトを組める体制を作ることで関係がうまくいくようになりました。
- 「笑顔」の意味の違い:ミャンマーでは困惑しているときも笑顔を見せる文化があります。「笑っているから理解しているはず」という思い込みが誤解を生んでいたことに気づき、必ず復唱確認を取るようにルールを変えました。
- 感謝を言葉で伝える大切さ:ミャンマー人スタッフから「ありがとうと言ってもらえると本当に嬉しい」という声を聞いて以来、施設全体で口頭での感謝を増やす文化が生まれました。
同じ挑戦をしようとしている施設へのアドバイス
特定技能外国人の採用を検討している介護施設の方に、1年間の経験から伝えたいことをまとめます。
- 採用前に「受け入れ体制」を整えることが最重要。日本語サポート・住居・生活ガイドを事前に用意してください。
- 初年度は「即戦力」を期待しないこと。6ヶ月は育成期間と割り切ってください。
- 登録支援機関との連携を密にすること。生活上の問題を早期に察知できる体制が定着率を左右します。
- 日本人スタッフへの事前説明も不可欠。「なぜ外国人を採用するのか」を丁寧に共有しないと職場の摩擦が生まれます。
石垣島の特定技能採用ガイドでは、より詳細な手続きと事例を紹介しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能の介護スタッフはどんな業務ができますか?
身体介護(入浴・排泄・食事の介助)、生活援助(掃除・洗濯・調理の補助)、機能訓練補助など、介護福祉士と同等の業務が認められています。ただし利用者や家族との直接的なコミュニケーションが多い業務は日本語力が求められます。
Q2. 特定技能から永住権へのルートはありますか?
特定技能2号(介護は現時点では対象外)や他の就労ビザを経由して10年以上の在留実績を積むことで永住申請の要件を満たせる場合があります。入管法の改正が続いているため、最新情報は出入国在留管理庁のサイトで確認してください。
まとめ:1年間で確信した「特定技能は長期戦略の柱になる」
石垣島の介護施設が特定技能ミャンマー人スタッフを受け入れてから1年。最初の3か月は不安と試行錯誤の連続でしたが、今では「彼女たちがいなければ施設が回らない」と言えるほどの戦力になりました。大切なのは制度の活用よりも「人として向き合う姿勢」です。ミャンマーから海を越えて島に来てくれたスタッフの覚悟と誠実さに、施設全体が多くのことを学びました。特定技能は「安く使える外国人労働力」ではなく「長期的に育てる仲間」として向き合うことで、その真価を発揮します。保育士採用と並んで福祉・介護分野の採用は急務です。ご相談はLINEから。
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Q. ミャンマー人スタッフを特定技能で採用する場合、特に注意すべき点は何ですか?
ミャンマーはクーデター後の政情不安により送り出し機関の選定に慎重さが求められます。政府認定機関・実績のある民間機関を選ぶことが重要です。また宗教(仏教徒が多い)・言語(ビルマ語)への配慮と、来日後のサポート体制の充実が定着率を左右します。
Q. ミャンマー人スタッフが職場に慣れるまでにかかる時間はどのくらいですか?
個人差がありますが、多くの場合3〜6か月で基本的な業務に自立して取り組めるようになります。言語が壁になる場合は図解マニュアルの整備・先輩ミャンマー人スタッフとのペアリングが効果的です。
Q. ミャンマー人スタッフの定着率を上げるために事業者がすべき最重要ポイントは何ですか?
「住居の安定」と「孤独感の解消」の2点が最重要です。職場に同じミャンマー人コミュニティがあること・日本人スタッフとの交流機会の創出・定期的な1on1面談の実施が定着率を大幅に高めます。
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