求人票の「アピールポイント」の欄を前に、手が止まってしまう。給与も休みも特別に良いわけではないし、うちの会社には書けるような良いところがない。宮古島・石垣島の小さな事業者から、そんな声を聞くことがあります。
でも、会社の良いところは、社長や担当者が気づいていないだけで、すでに職場の中にあることがほとんどです。いちばん確かな見つけ方は、今働いている社員に聞くことです。この記事では、社員への聞き方と質問の例、答えを求人の言葉にする手順をまとめます。
この記事の結論
- アピールポイントが書けないのは、全員に向けた「すごいところ」を探しているから
- 会社の良さは、社長が「当たり前」だと思っていることの中にある
- 同じ会社でも、どこを良いと思うかは人によって違う。だから何人かに聞く
- 「なぜ好きか」より、過去の出来事や具体的な場面を聞き、抽象的な答えには聞き返す
目次
アピールポイントが書けない理由
アピールポイントが書けないとき、多くの場合は「どんな人が読んでも魅力的に感じる、他社にはない強み」を探しています。そんなものは、大きな会社でもなかなかありません。
見方を変えて、「どんな人にとって魅力なのか」を考えると、書けることが見えてきます。たとえば、残業が多いことは、多くの人には短所に見えます。でも、子どもの学費のためにしっかり稼ぎたい人にとっては、残業代がきちんと出ることは魅力です。年齢の高い社員が多い職場は、若い人には物足りなく見えるかもしれませんが、落ち着いた職場で働きたい人には安心材料になります。
長所も短所も、見る人によって変わります。全員に向けた強みを探すのをやめて、「自社に合う人にとっての良さ」を探すことが出発点です。
会社の良さは「当たり前」の中にある
社長に「御社の良いところは?」と聞くと、「うちは普通ですよ」という答えが返ってくることがよくあります。ところが社員に聞くと、次のような話が出てくることがあります。
- 社長が細かいことに口を出さず、現場に任せてくれる
- 必要な道具や設備は、言えばすぐに買ってくれる
- 仕事が終われば、みんなすぐに帰る。飲み会の強制がない
- 子どもの行事で休みたいと言いやすい
- 失敗を上司に報告しても怒られない
- 先輩が忙しくても、聞けば手を止めて教えてくれる
どれも、会社として特別な制度を作ったわけではありません。長く続いてきた職場の空気や、社長の考え方から自然に生まれたものです。会社の中にいる人にとっては当たり前すぎて、良いところだと気づいていないのです。
何人かに聞く。人によって見ている良さは違う
同じ会社で働いていても、どこを良いと思うかは人によって違います。たとえば次のようなことがあります。
| 社員 | この会社の良いところ |
|---|---|
| 50〜60代のベテラン | 定時に帰れる、給与が安定している |
| 子育て中の30代 | 休みが取りやすい、急な休みでも周りが助けてくれる |
| 20代の若手 | 任される仕事が早い、資格の費用を出してくれる |
| 島外から来た人 | 住まいや車の手配を手伝ってくれた |
だからこそ、1人だけでなく、年齢や立場の違う何人かに聞くことが大切です。そして、採用したい人に近い社員の話を、求人の中心に置きます。
聞く前の準備
- 1人あたり30分〜1時間を、仕事の時間内に取る
- 「求人に使いたいので、この会社のことを教えてほしい」と目的を伝える
- 評価や査定には関係ないこと、話したくないことは話さなくていいことを伝える
- 聞き手は、できれば直属の上司以外の人が担当する(本音が出やすい)
- メモをとるか、了承を得て録音する
「なぜ好きか」ではなく、出来事を聞く
「この会社の良いところは何ですか」「なぜこの会社で働いているのですか」と聞かれても、多くの人はすぐには答えられません。ふだんから言葉にして考えているわけではないからです。その結果、「人間関係がいい」「楽しい」といった、誰でも言える言葉が出てきます。
大切なのは、答えを考えてもらうのではなく、出来事を思い出してもらうことです。「いつ、どこで、誰が、何をしたか」を聞いていくと、その人ならではの話が出てきます。
質問の例
入社のころ
- この会社に入る前は、どんな仕事をしていましたか
- この会社を知ったきっかけは何でしたか。ほかにも候補はありましたか
- 面接や見学に来たとき、印象に残っていることはありますか
- 入ってすぐのころ、いちばん大変だったことは何ですか。それをどう乗り越えましたか
ふだんの仕事
- 昨日(または最近のある日)は、朝来てから帰るまで何をしましたか
- 仕事で「うまくいったな」と思った最近の出来事を教えてください
- 困ったとき、誰に相談しますか。最近相談したのはどんなことでしたか
- 休みを取るときは、どうやって伝えますか。取りにくいと感じることはありますか
続けている理由
- 辞めたいと思ったことはありますか。そのとき、なぜ続けようと思いましたか
- 前の職場と比べて、ここが違うと感じるところはどこですか
- 友人や家族に、この会社のことをどう話していますか
- 知り合いにこの会社を勧めるとしたら、どんな人に勧めますか
抽象的な答えには聞き返す
| 最初の答え | 聞き返し | 出てきた具体的な話(例) |
|---|---|---|
| 人間関係がいいです | たとえば、最近どんなときにそう感じましたか | 先週、注文を間違えたときに、先輩が一緒にお客様に謝ってくれて、そのあと責めずにやり方を教えてくれた |
| やりがいがあります | どんなときに、やりがいを感じますか | 常連のお客様が名前を覚えてくれて、私がいる日を選んで来てくれるようになった |
| 働きやすいです | 前の職場と比べて、何が違いますか | 前の職場は休みの希望を言いにくかったが、ここは子どもの行事を先に伝えれば必ず休める |
| 接客が好きで入りました | 接客のどんなところが好きですか | 話すのが得意なわけではないが、困っているお客様の探し物を一緒に見つけるのが好き |
最後の例のように、聞き返すと「思っていたのとは少し違う好き」が見えてくることがあります。それも大切な情報です。「明るく話し好きな方」と書くより「話すのが得意でなくても、人の役に立つのが好きな方に向いています」と書いた方が、合う人の応募のハードルが下がります。
求人の言葉にする手順
- 聞いた話を書き出し、何人もの社員から出てきた話に印をつける
- 採用したい人にとって魅力になる話を選ぶ
- 「人間関係がいい」ではなく、聞き取った場面のまま書く(例:「ミスをしたときも、先輩が一緒にお客様に謝り、そのあとやり方を教えてくれます」)
- 話してくれた社員に、求人に使ってよいか確認する
言い換えのコツは求人の決まり文句を言い換えるでも紹介しています。
まとめ
- 全員に向けた強みではなく、自社に合う人にとっての良さを探す
- 会社の良さは、社長が当たり前だと思っていることの中にある
- 年齢や立場の違う何人かの社員に、上司以外の人が聞く
- 出来事を聞き、抽象的な答えには「たとえば」と聞き返して、場面のまま求人の言葉にする
よくある質問
Q. 社員が少なく、聞ける人が2〜3人しかいません。
2〜3人でも十分です。少人数の職場ほど、一人ひとりの話がそのまま職場の様子を表します。辞めた人や、取引先、よく来るお客様から「この会社はどう見えるか」を聞くのも参考になります。
Q. 社員から不満ばかり出てきたらどうすればいいですか?
不満が出てくるのは、本音を話してもらえた証拠です。採用の前に職場で改善できることが見つかったと考え、できることから手をつけましょう。不満を抱えたままの職場に新しい人を迎えても、定着しにくくなります。
Q. 社長が自分で聞いてもいいですか?
聞いてかまいませんが、社長には言いにくいこともあります。社長が聞く場合は、評価に関係ないことをはっきり伝え、否定せずに最後まで聞くことを心がけてください。外部の人に聞き手を頼むのも一つの方法です。
採用での自社の見せ方全体は採用ブランディング5ステップ、求人票の見直しは応募が来ない求人票を改善する8つのポイントもご覧ください。島の人事部は、宮古島・石垣島の事業者にうかがい、社員の方への聞き取りから求人づくりまでをお手伝いしています。社内の人には聞きにくい本音も、外の立場だからこそ聞けることがあります。「うちには良いところがない」と感じていたら、ご相談ください。


