目次
この記事でわかること
- 台風の日に「有休を使って休んで」と指示していいか
- 会社を休みにしたとき、休業手当がいる場合・いらない場合
- 出勤できなかった人の扱い(欠勤・年休・特別休暇)
- 就業規則に書いておくことと、決め方の手順
宮古島・石垣島では、毎年のように台風が来ます。暴風の中を出勤させるわけにはいかない。でも、ホテルや介護施設のように、休めない仕事もある。そして台風が来るたびに、「休んだ日の給料はどうするのか」「有休を使ってもらっていいのか」で迷う、という声をよく聞きます。
この記事では、厚生労働省の資料をもとに、台風の日の休みと賃金の考え方と、就業規則に書いておくことをまとめます。
「台風だから有休を使って」と指示していいか
年休は、働く人が請求した時季に取るのが原則です(労働基準法第39条)。会社が日を決めて取らせられるのは、次の2つの場合に限られます。
- 年5日の時季指定:年10日以上の年休がある人に、年5日を取らせる義務の分。働く人の意見を聞いたうえで、会社が時季を指定します
- 計画的付与:労使協定を結んだうえで、年休のうち5日を超える部分について、会社が休む日を前もって決める制度です(年休の計画的付与と時間単位の年休)
台風は前もって日が決められないので、計画的付与にもなじみません。できるのは、「休んだ日を年休にすることもできます」と案内し、使うかどうかは本人に選んでもらうことです。給料が減るのを避けたい人は、年休を選ぶでしょう。
会社を休みにしたとき:休業手当はいるか
会社の都合で働く人を休ませた場合(使用者の責に帰すべき事由による休業)は、平均賃金の60%以上の休業手当を払う必要があります(労働基準法第26条)。一方で、天災事変などの不可抗力による休業なら、休業手当を払う義務はありません。
不可抗力といえるのは、次の2つの要件をどちらも満たす場合です。
- その原因が、事業の外部から発生したこと
- 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしても、避けることができなかったこと
出典:厚生労働省「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」(令和3年7月15日)
同じQ&Aでは、次のように示されています。
- 事業場の施設・設備が災害で直接被害を受けて休業する場合:原則として、会社の責任による休業には当たらない(休業手当の義務はない)
- 施設・設備は被害を受けていないが、取引先や道路などが被害を受けて休業する場合:原則として、会社の責任による休業に当たる。ただし、上の2つの要件を満たす場合は例外的に当たらない。取引先への依存の程度、代わりの手段、休業を避ける努力などを総合的に判断する
台風に当てはめると
| 状況 | 考え方 |
|---|---|
| 停電・浸水・建物の被害で、店や事業所が営業できない | 不可抗力に当たる可能性が高い(休業手当の義務はない) |
| 暴風警報が出たので、安全のために会社の判断で休みにした(営業はできる状態) | 会社の判断による休業として、休業手当が必要になる可能性がある |
| お客さんが来ないので、会社の判断で店を閉めた | 会社の都合による休業として、休業手当が必要 |
| 店は開いているが、道路が通れず本人が出勤できなかった | 会社の休業ではないので休業手当の義務はなく、欠勤の扱いになる(本人が選べば年休も使える) |
どれに当たるかは、状況によって判断が分かれます。迷う場合は、宮古労働基準監督署・八重山労働基準監督署に相談してください。
出勤してもらう場合に気をつけること
- 安全への配慮:会社には、働く人が安全に働けるよう配慮する義務があります(労働契約法第5条)。暴風の中の出勤や、危険な場所での作業をさせないようにします
- 職場での待機・泊まり込み:宿泊施設や介護施設などで、会社の指示で職場に待機したり泊まり込んだりした時間は、労働時間になります。時間外・深夜の割増賃金も必要です。泊まる場所や食事も用意しておきます
- 通勤の事故:台風の日でも、通常の経路での通勤中のけがは、労災保険の通勤災害の対象になり得ます。だからこそ、無理に出勤させないことが大切です
就業規則に書いておくこと
台風のたびに迷わないよう、ルールを先に決めて、就業規則などに書いておきましょう。
- 休みにする判断の基準:例「暴風警報が出た場合」「路線バスが運休した場合」「会社が判断した場合」
- 誰が、いつまでに決めて、どう連絡するか:例「前日の18時までに店長が決めて、LINEのグループで全員に知らせる」
- 会社が休みにした日の賃金:全額払う/休業手当(平均賃金の60%以上)を払う/不可抗力の場合は払わない、など。決めた内容をはっきり書きます
- 出勤できなかった人の扱い:欠勤とするか、有給の特別休暇(台風休暇など)にするか。年休を使いたい人は、あとから申し出てもよいか
- 遅刻・早退の扱い:台風による遅刻や早退は、賃金を引かない、など
- 休めない部署の体制:宿泊・介護など、誰が出勤し、どこに泊まり、手当をどうするか
- 在宅でできる仕事:事務など、自宅でできる仕事を在宅勤務にするか
決め方の手順
- 常時10人以上を使う事業場は、就業規則を変えたら、働く人の代表の意見を聴いて、労働基準監督署に届け出ます
- 10人未満の職場でも、ルールを書面にして全員に知らせておくと、台風のたびに迷わずに済みます
- 賃金を下げる方向の変更は、不利益変更に当たるので、働く人とよく話し合って合意を得ることが大切です
台風の多い島だからこそ、求人でも伝える
「台風の日は無理に出勤させない」「台風で店を閉めた日も賃金を払う」といったルールは、働く人にとって安心できる材料です。島外から来る人ほど、台風の日にどうなるのかを気にします。決めたルールは、求人票や採用ページにも書いておきましょう。
よくある質問
台風の日、休んだ従業員に「有休にしておくね」と会社が決めてもいいですか?
原則としてできません。年休は、働く人が請求した時季に取るのが原則です。「年休にすることもできます」と案内し、使うかどうかは本人に選んでもらいます。
暴風警報が出たので会社の判断で休みにしました。給料は払う必要がありますか?
営業できる状態なのに会社の判断で休みにした場合は、会社の都合による休業として、平均賃金の60%以上の休業手当が必要になる可能性があります。停電や建物の被害で営業できない場合は、不可抗力として休業手当の義務がないと考えられます。判断に迷う場合は、労働基準監督署に相談してください。
道路が通れず出勤できなかった人の給料はどうなりますか?
会社が休みにしたわけではないので、休業手当の義務はなく、欠勤の扱いになります。本人が希望すれば年休を使えます。就業規則で、有給の特別休暇とすることもできます。
出典:厚生労働省「自然災害時の事業運営における労働基準法や労働契約法の取扱いなどに関するQ&A」(令和3年7月15日)/労働基準法第26条・第39条・第89条・第90条/労働契約法第5条/厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」
※本記事は2026年10月25日時点で公表されている情報をもとにした一般的な解説です。制度や要件は変わることがあります。個別の取り扱いは、窓口や専門家にご確認ください。



